アバークロンビー・カルテット3部作 その1
レコジャケの虫干しを少々——。ジョン・アバークロンビーは1944年ニューヨーク生まれのジャズ・ギタリスト。
50音順でないあらゆるジャズ人名事典のトップに掲載されるヴァーチュオーゾ。
ドイツのレーベルECMで録音されたアバークロンビーの作品で、なぜか不遇をかこつている作品が3つある。

“Arcade”(ECM1133 1978年12月、オスロで録音)邦題「マジカル・フィンガー」(トリオレコード)
“Abercrombie Quartet”(ECM1164 1979年11月、オスロで録音)邦題「ブルー・ウルフ」(トリオレコード)
“M”(ECM1191 1980年11月、ドイツで録音)邦題「ラプソディー」(トリオレコード)

メンバーはいずれも同じ、リチャード・バイラーク(p)、ジョージ・ムラーツ(b)、ピーター・ドナルド(ds)のカルテット。
2001年7月になって、“Arcade”がやっとCD化されたが、残りの2作はネット配信もnot available のまま、いまだ廃盤状態。
“M”などはアバークロンビーのひとつの極を捉えていると言ってもいいくらいの作品なのに……。

稲岡邦弥「ECMの真実」(2001年、河出書房新社刊)によると、
プロデューサーのマンフレート・アイヒャーとピアニストのバイラークの確執にその原因があるらしい。
もろもろ伏線があるようなのだが、“M”の録音時に二人の決定的な衝突があって、
当時、バイラーク参加の作品はすべて廃盤になったという(現在はCD化された作品も部分的にある)…… 明日に続きます

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“Arcade”(ECM1133), “M”(ECM1191), “Abercrombie Quartet”(ECM1164)







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Richard Beirach(piano), John Abercrombie(guitar, mandolin guitar), George Mraz(bass), Peter Donald(drums)


★★★関連エントリ★★★ 虫干し"ECM Sleeves of Desire"


by masashiw2 | 2010-10-01 00:08 | かわうその祭 | Comments(2)
Commented by ken_kisaragi at 2010-10-01 01:15
ウエスのコテコテ・バップから聞き出したジャズギター
<Characters>は新鮮でした。
当時アコースティック独奏などと言う試みはECMならではでしょうか。
しかし今思うとジョン・スコやカート・ローゼンウィンケルの中からも
Abercrombieが聞こえてくるのですね、案外影響力大きい人だったのかも。
<Arcade>はアンダーカレントに匹敵する名盤でしょう。

Commented by masashiw2 at 2010-10-01 01:29
絶賛の嵐、うれしいなぁ。さすがkenさん。有り難うございます。
“Character”は私の葬式の時、セレモニーホールでかけたい名盤です。
この“耽美3部作”では“M”がとりわけお気に入りです。
次回は内容に触れてみたいと思います。
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